補聴器と集音器の違いをご存じでしょうか。見た目はよく似ていますが、両者は大きな違いがあり、仮に使用方法を間違えると、耳を痛めかねません。必要に応じて使い分ける必要があります。この記事では、補聴器と集音器の違いに加え、それぞれの機能について詳しく解説。ぜひ参考にしてください。
補聴器は医療機器
補聴器と集音器の大きな違いは、厚生労働省に医療機器と認められているかどうかです。「耳に挿入し、聞く力を補助する機器」は補聴器だと認識している人は多いですが、厚生労働省が認可していないものは補聴器を名乗れません。
補聴器は、薬事法にて定められた医療機器であるため、メーカーは聞く能力を補助する性能があること、使用する人の健康を害することなく安全に使用できることを証明し、認可を得てはじめて補聴器を名乗ることができるのです。認可を得るまでは効果や安全性が証明されていないため、製造販売は不可能です。
また、販売する際は細かく調整し、その人が心地よい設定に調整してから販売する関係で、対面販売しなければならない点も補聴器に特有なものです。
さらに、購入者の聞こえ方は一定ではなく、加齢とともにだんだんと変化します。補聴器は、耳が聞こえなくなってきた人が聞く力を取り戻すための医療機器であるため、聞こえ方の変化に合わせて調整を重ねることが不可欠で、購入して終わりでない点が特徴です。
また、補聴器は安全性に配慮するための対策が施されています。たとえば、突然起こった落雷の音を増幅してしまうことがないように、リミッターがかけられていることが多いです。さらに、集音のために装備されたマイクがハウリングを起こさないような設計になっています。
また、人によって違う聞こえ方に合わせて細かくカスタマイズできることが大きな特徴です。たとえば、小さい音を増幅した場合、大きい音もさらに大きくなっては耳を痛めてしまいます。加えて、音の高さによっては充分聞こえているために、特定の周波数帯だけ引き上げればバランスがよくなります。
しかし、すべて増幅してしまっては耳障りになり、耳を痛めかねません。よって、聞こえ方を分析し、小さい音量や聞こえにくい高さの音は大きく、大きな音量や充分聞こえている高さの音は必要以上に大きくしないなど、細かなフィッティングが欠かせないのです。
補聴器は人によって聞こえにくい音だけを引き上げる、細かなカスタマイズが可能であることが大きな特徴。よって、補聴器は比較的高価な製品であることが多いです。購入の際は、じっくりとフィッティングを受け、納得してから購入することをおすすめします。
集音器は家電
一方、集音器は家電と同じ位置づけであり、医療機器ではありません。よって、厚生労働省の認可を必要としないため、いつでも製造販売することが可能です。
さらに、補聴器が聞こえにくい音を増幅するのに対し、集音器はマイクで集音した音を、そのまま増幅してスピーカーから流します。補聴器とは違い、すべての音を大きくするのが特徴です。場合によっては、聞こえている周波数帯や大きい音も一緒に増幅されてしまいます。
よって、健康な人がもっと音を大きく聞きたい用途で使われることが多く、製品の構成は比較的シンプル。したがって、カスタマイズ性にとぼしく、聞こえ方が悪化していくケースが多い、日常生活に支障が出るレベルの難聴の聞こえを改善するのには不向きな製品であるといえるでしょう。補聴器にくらべて構造がシンプルなため、価格は安価であることが多いです。
自分に必要な機能に応じて使い分けよう
補聴器と集音器は多くの違いがあるため、機能として必要な機器を購入すべきです。注意すべきポイントを確認していきましょう。
難聴レベル
聴力レベルが40～70dB未満の中程度難聴である場合、補聴器にしたほうがよいでしょう。近くで話をする必要がある、日常生活に支障が出るレベルの難聴です。
中程度難聴を日常生活に問題がないレベルまで改善する必要があるため、補聴器技能者の専門的なサポートが受けられる補聴器を選択すべきです。一方、聴力レベルが40dB未満の軽度難聴の場合は、集音器が適しています。
費用と手間をかけられるか
補聴器は高価であり、購入するには対面することを求められるため、高い価格や細かな調整がネックです。お金と手間をかけられない場合は、集音器を選択しましょう。
集音器でも、ある程度は音量調節が可能であるため、大きくなりすぎない程度で補助的に使うことをおすすめします。しかし、安全性は補聴器にくらべ劣るため、調整は慎重に行いましょう。
まとめ
ここまで補聴器と集音器の違い、機能について詳しく解説しました。補聴器は医療機器であり、集音器は家電であることが大きな違いです。補聴器は医療機器であるため、安全性やカスタマイズ性は優れています。中程度難聴の方は、聞こえが悪く、日常生活が不便な状態であるため、専門家のアドバイスを受けられる補聴器を選択しましょう。
一方、手軽に音を大きくしたい軽度難聴の方は集音器がおすすめです。手軽に音を増幅でき、補聴器よりも安価で試せるメリットがあります。しかし、設定によっては耳を痛めかねないため、調整は慎重に行う必要があるでしょう。
