音が聞き取りにくい人にとって、補聴器は快適に過ごすため欠かせない存在です。一般的な補聴器の寿命は5年程度といわれていますが、適切な手入れをすることで、長く使い続けられます。補聴器の値段は決して安くはありませんから、自宅も手入れして大切に使っていきたいものです。今回は自宅でできる補聴器の日常的なお手入れ方法を紹介します。
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補聴器のお手入れに必要な道具
自宅で行う補聴器のお手入れは、本体に付着した皮脂や耳垢の除去や、劣化してしまった部品の交換がメインです。
補聴器のクリーニングは乾いたクロスやウェットティッシュを使って、汚れのふき取りを行います。補聴器を傷つけないよう、マイクロファイバーなどのやわらかい手触りのものがおすすめです。ウェットティッシュは除菌効果が期待できますが、機種によっては故障の原因にもなるため、水分の使用が推奨されない製品では使用できません。また、補聴器の表面はアルコールに弱い疎水性コーティングが採用されていることが多いため、アルコールを含まないタイプのウェットティッシュを使用します。
補聴器に付着した耳垢やほこり、化粧品パウダーや花粉といった微粒子の除去にはブラシを用います。購入した補聴器の付属品にブラシがついていない場合は、毛の細い小さいハブラシなども代用できます。補聴器本体とは別売りのお手入れ専用道具がセットになったメンテナンスキットには、ブロアーやブラシといった掃除用品や、バッテリーチェッカーなどのツールも含まれているため、用意しておくとお手入れが便利になります。
自分でできる補聴器のお手入れ方法
補聴器のお手入れは「耳あかの掃除」「除湿対策」「部品交換」の3つが代表的です。補聴器にとって除湿対策は重要で、湿気は音質に悪い影響が出やすく、故障の原因にもなるため、保管時はドライエイドや乾燥ケースに入れて、湿気から遠ざけるようにしましょう。耳あかの掃除と部品交換は補聴器の種類によって異なります。補聴器の種類ごとの掃除の仕方を紹介します。
耳あな型(CICタイプ/カナルタイプ)
耳あな型は耳の穴に入れて使用するタイプの補聴器です。補聴器の外側にある入り口(マイク)でキャッチした音声を内蔵されたアンプで増幅し、耳の内側にある出口(スピーカー)で伝えます。音の入り口・出口にある穴に汚れやほこりが詰まってしまうと、性能の低下や、故障の原因にもつながります。耳あな型は、補聴器の大部分が耳と接触しているため、耳あかや皮脂などで汚れやすいのが特徴です。
お手入れの方法は、音の入り口・出口部分の穴の大きさに合わせて、ブラッシングしたり綿棒などでかき出したり、クリーニングツールを使ったりして掃除します。シェル(補聴器の外形部)表面のくぼみについた耳垢や油分などの汚れは、乾いた布やティッシュペーパー、専用ブラシで掃除します。交換する部品はセルストップ(音の出口に耳垢が侵入しないようガードするフィルター)です。使用中のセルストップを外して軽くブラッシングしてから新しいものを取り付けます。交換頻度は通常3か月に一度ほどですが、耳垢がたまりやすい人はこまめに交換する必要があります。
耳かけ型/ミニ耳掛け型/RICタイプ
耳かけ型は名前の通り、耳にかけて使用する補聴器です。すべての難聴程度に対応でき、価格と機能が豊富に揃っていることやハウリングが少ないといったメリットがある一方、耳あな型に比べて目立ちやすく汗水に弱いといったデメリットがあります。
お手入れの方法は、耳栓(イヤモールド)部分を取り外して洗浄を行います。洗浄には専用クリーナーか中性洗剤をふくむぬるま湯が使えます。洗浄後は水分をしっかり拭きとり、耳栓やチューブ内部の水滴はエアブロアーで吹き飛ばします。RICタイプはワックスガード(耳垢がスピーカーに侵入しないようにするフィルター)に部品交換が必要です。
補聴器をお手入れするときのポイント
補聴器をお手入れするときには、忘れてはならないポイントがいくつかあります。
ひとつめは必ず補聴器から電池を取り外し、電源を切ることです。補聴器は入浴や睡眠以外の時間は基本的につけっぱなしです。お手入れ中は電池の消費を防ぐためにも、また掃除中の誤作動を防ぐためにも、電池を取り外しましょう。電池に触れる際には、手の汚れや皮脂が電池に移ることで性能低下しないよう、事前に手を洗っておくことも大切です。
補聴器の汚れは使用者の体質や、住んでいる地域や季節による湿度や気温などの環境状態によって、掃除の頻度が異なります。汗や皮脂の出やすい人や、湿度の高い夏などはこまめにクリーニングを行うなど、補聴器の汚れに合わせてお手入れの頻度を調節しましょう。
補聴器の種類によっては、形状が複雑だったり、非常に小さい穴で構成されていたりと、専門の掃除用具を使う必要があったりして、自身で手入れすることが困難な場合もあります。そのような場合には無理せず、補聴器のメンテナンスのプロにクリーニングを依頼するようにしましょう。
まとめ
自宅でできる補聴器のお手入れ方法を紹介しました。必要な道具としては、補聴器本体の汚れを除去するクロスやウェットティッシュ、ブラシや別売りのメンテナンスキットが有効です。お手入れは補聴器の取り扱い説明書に従い、推奨される掃除用具を使います。汚れは皮脂や耳垢・汗などが原因となるため、使用者の体質や季節に合わせて掃除の頻度を調節しましょう。また湿気は補聴器の性能に影響を与えるため、掃除後は水分をしっかりと除去し、保管時はドライエイドや乾燥ケースに入れるようにしましょう。