
補聴器は高額なため、中古品の購入を検討する人も少なくありません。しかし、中古の補聴器は買ってはいけないとされています。一体なぜ買ってはいけないのでしょうか?本記事では、中古補聴器の購入をしてはいけない理由について解説します。ぜひ、補聴器購入を検討する際の参考にしてください。
補聴器の販売は法律で禁じられている
聴覚障害を抱える人々にとって、補聴器は生活に欠かせないものです。補聴器は聴覚を補助するために設計されており、使用者の耳にフィットする必要があります。また、その機能は聴覚の状態に応じて調整されるため、非常に精密な設計が求められます。
さらに、補聴器は適切に調整されなければ、効果を発揮しないだけではなく、使用者に不快感や健康上の問題を引き起こす可能性もあります。このように、補聴器は使用者の健康に直接関わるため「管理医療機器」に分類されています。
そのため、補聴器の販売は一般的な商品とは異なり、法律で厳格に管理されています。補聴器の販売業者であっても、行政に販売業・貸与業の届出を行う必要があり、一般の個人が管理医療機器を販売することはできません。
とくに、フリマサイトやオークションで補聴器を販売することは違法であり、その取り扱いに関わることは避けるべきです。また、補聴器は製造元によって定められた「耐用期間」があり、通常は5年程度とされています。
この耐用期間を超えると、補聴器の安全性や効果が十分に保障されなくなり、製品としての販売が禁止されることになります。したがって、販売業者は中古補聴器を取り扱うことができないうえに、メーカー側も保証ができない中古品の販売を許可することはありません。
自分の聴力に合わない可能性が高い
補聴器は個人間で売買を禁じられていますが、譲渡であれば問題はないとされています。しかし、いくら法律的に問題がないとはいえ、補聴器を他人から譲り受ける場合もリスクがあります。それは、譲渡された補聴器は新しい所有者の聴力に合わない可能性がある点です。
そもそも補聴器は一人ひとりの聴力に合わせて選定され、調整されています。聴力は年齢や環境、個々の耳の形に大きく左右されるため、他人の補聴器をそのまま使うのはかんたんではありません。
譲渡されたものは、前の所有者の聴力に合わせて調整されているため、そのまま使うと音質や聞こえ方が自分の耳に合わないことが多いのです。このように聴力に合わない補聴器を使用すると、不快感を覚えたり、逆に聞こえが悪化する可能性もあるので大変危険です。
使用する前に、製品の説明書に記載されている対応聴力範囲を確認することが重要ですが、それだけでは完全に自分の聴力に合うかどうかを判断することは難しいでしょう。調整する場合は、聴力測定を行い、そのデータに基づいて補聴器の内部設定を変更することが求められます。
また、オーダーメイドの補聴器の場合、耳型を採取して作られているため、他の人が使用するのは非常に難しいでしょう。耳型に合わない補聴器は、脱落やハウリングを引き起こす原因となり、最悪の場合耳を傷つけてしまう恐れもあります。
故障のリスクや衛生面の問題がある
中古の補聴器には、故障のリスクや衛生面の問題もあります。まず、故障のリスクについてです。補聴器は精密機器であり、長期間の使用によって劣化が進むことがあります。中古品の場合、すでに内部の部品が摩耗していたり、過去に修理された履歴があるかもしれません。
前項で説明したとおり、補聴器の耐用期間は通常5年程度なので、それ以上の使用となるといつ故障してもおかしくありません。古い補聴器では使い始めてもすぐに故障してしまう可能性が高いといえるでしょう。
さらに、見た目には問題がなくても、すでに湿気や汗が機器内部に侵入していて故障しやすくなっている可能性も考えられます。とくに補聴器は耳に装着して使用するため、耳だれや皮脂などが付着し、内部の電子部品に影響を与えることがあります。
そのため、中古品はすぐに使用できなくなるリスクをともないます。また、衛生面の問題もあります。補聴器は耳の中に直接入れるものなので、前の使用者が耳の病気を持っていた場合、感染のリスクがあるかもしれません。
たとえ外見上きれいに見えても、目に見えない細菌やウイルスが残っている可能性があります。耳はデリケートなので、衛生面のリスクを踏まえると、補聴器は新品を購入したほうがよいでしょう。新品であれば、故障のリスクが低く、衛生的にも安心して使用できます。
まとめ
フリマサイトやオークションで見かける中古補聴器の多くは、実際には不正に販売されていることが多く、消費者保護の観点からも非常に問題があります。補聴器は管理医療機器にあたるため、厳しい制約があり、個人で販売することはできず、業者であってもかんたんに売買することはできないものです。販売ではなく、譲渡されたものであれば問題ありませんが、譲渡されたものであっても、自分の聴力にあわなかったり、故障のリスクや衛生面などの問題を抱えているため、購入する際は、正規の販売業者を通じて万全のサポートを受けましょう。