
メニエール病は、めまいや耳鳴り、難聴を引き起こす内耳の疾患で、発作的に症状が現れるのが特徴です。日常生活に大きな影響を及ぼすことがあり、とくに聴力の低下はコミュニケーションに支障をきたします。そこで気になるのが補聴器の効果です。本記事では、メニエール病の症状や原因、補聴器の効果について解説します。
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メニエール病とは
メニエール病は、内耳の異常によって発生する疾患であり、女性に多く発症する傾向があります。
この病気の名称は、19世紀のフランスの医師プロスペル・メニエールがめまいの原因が内耳にあることを指摘したことが由来です。メニエール病のおもな原因は、内耳の蝸牛管に存在する内リンパと呼ばれる体液の過剰な増加による内リンパ水腫とされています。
しかし、なぜ内リンパが異常に増えるのか、その根本的な原因は現在も明確には解明されていません。一説には、ストレスやアレルギー反応、遺伝的要因が関係している可能性があると考えられています。
メニエール病のおもな症状として、数十分から数時間ほど続く強い回転性のめまい、吐き気や嘔吐、キーンやゴーといった耳鳴りや耳閉感、そして難聴が挙げられます。発作とともに聴力が低下し、とくに低音域が聞こえにくくなることが多く、さらに症状が進行すると、聴力の回復が難しくなるため早めの治療が必要です。メニエール病の治療法には、薬物療法や生活習慣の見直しがあります。
内リンパ水腫を軽減するために利尿剤、めまいの症状を抑えるために鎮静剤や向自律神経薬が処方されることがほとんどです。さらに、ストレスが発症の要因のひとつとも考えられているため、日常生活のストレスを軽減することが推奨されています。規則正しい食生活や十分な睡眠をとることも症状軽減のために重要です。
メニエール病に補聴器は有効なのか
メニエール病によって、聴力の低下が進行すると、日常生活に支障をきたすことがあります。
残念ながらメニエール病の治療に補聴器は有効ではありませんが、メニエール病の後遺症として残る難聴や耳鳴りに対しては、補聴器が有用な場合があります。
難聴
メニエール病による難聴が回復せず日常生活に影響を与える場合、補聴器の使用が検討されます。
少し耳が遠くなるくらいと症状を甘く見ていてはいけません。じつは難聴はコミュニケーションの妨げとなるだけではなく、認知機能の低下を引き起こす可能性があることが指摘されています。
厚生労働省によると、難聴は認知症のリスク要因のひとつとされています。補聴器を適切に使用することで聞こえをサポートし、家族や友人との会話を楽しむことができます。これにより脳への刺激が増し、認知症の予防や進行の遅延につながる可能性があるのです。
耳鳴り
耳鳴りの症状に対しても、補聴器が有効です。
耳鳴りは、脳が本来聞こえないはずの音を作り出してしまうことで生じると考えられています。補聴器で聴力を補うことで、耳鳴りの症状が軽減する可能性があります。ただし、補聴器の聞こえに慣れるまでに時間がかかるため、継続して使い続けることが求められます。
メニエール病による難聴に最適な補聴器とは
メニエール病による難聴は加齢性難聴とは異なり、低音域の聞こえが低下しやすく、大きな音に対する不快感(補充現象)をともなうことが多いのが特徴です。
そのため、補聴器の選択・調整には特別な配慮が必要です。
継続的に使えるものを選ぼう
メニエール病の方には、難聴が進行した場合でも継続して使用できる補聴器がよいでしょう。
たとえば、小型耳かけ型(RIC)は、レシーバ(スピーカー部分)を交換することで出力を調整でき、聴力の変化に柔軟に対応可能なためおすすめです。また、一部の耳あな型補聴器もレシーバサイズの変更が可能なため、継続して使用できるといえます。
補充現象対策をしよう
先述したとおり、メニエール病は補充現象が起きるため、その対策として、不快閾値(音に対する不快さ)を測定し、それにもとづいた音質調整を行うことが重要です。
さらに、突発的な大きな音を抑える衝撃音抑制機能が搭載された補聴器を選ぶことで、より快適に使用できます。
低い周波数の聞こえの低下に対応した補聴器を選ぼう
メニエール病は低音域の聞こえが低下しやすいため、低周波数の調整が細かく行える補聴器が適しています。
個々の聴力に合わせた最適な補聴器を選ぶためには、専門店での聴力測定と相談が不可欠です。
メニエール病患者が補聴器を使用する際の注意点
メニエール病による難聴には、特有の注意点があります。
たとえば、大きな音に過敏になり、通常の人よりも小さな音でも不快に感じることがあるのです。そのため、補聴器によって増幅された音に違和感や不快感を覚えることが多く、快適な聞こえを得られない場合があります。
補聴器の使用を検討する際は、医師と相談し、装用しても問題ないかを確認することが重要です。また、音量調整が可能な機種や、突発音・衝撃音の抑制機能が優れた機種を選ぶことで、不快感を軽減できる可能性があります。
まとめ
メニエール病は、内耳のリンパの異常により発作的なめまいや耳鳴り、難聴を引き起こす疾患です。とくにストレスや生活習慣が関係していると考えられており、適切な治療と予防策を講じることで症状の悪化を防ぐことができます。早期の診断と治療が重要であるため、疑わしい症状がある場合は、耳鼻咽喉科を受診してみましょう。また、補聴器はメニエール病そのものの治療には有効ではありませんが、後遺症としての難聴や耳鳴りの解消には役立つことがあります。ただし、メニエール病特有の聴覚過敏のため、補聴器の選び方や使用方法には注意が必要です。医師や専門家と相談しながら、適切な補聴器を選びましょう。